近松物語

土曜の朝は、御老体の のど飴ラッピングがさがさ音がひびく京橋NFCにてひたすら感動に打ちふるえておりました。

…まったく溝口健二は鬼か人か、人情を過不及なく描き出す手並は到底人間業とは思えないだす。

琵琶湖上のシーンでは、宮川一夫の撮影に眼が眩み、舟上のふたりに心が眩み、「アッ!」(水木しげる風に。眼の辺りに手をやる)てな感じで、これは実際に見た人でないとわからないと思う。

若い世代にももっと見てもらいたいなぁ。西鶴一代女山椒大夫よりもストレートに良さが彼らへ伝わるのではないかと思うのですが(自分が今の時点で一番好きなのは一代女ですが)。香川京子のおさんは非の打ちどころがなく綺麗だし…
大経師以春-その手代助右衛門-院の経師以三(それぞれ進藤英太郎、小沢栄、石黒達也)三者三様のシヴィアな立ち回りもうけるんじゃないかと思うし…
見る眼はなっちゃおらんが口だけは達者な我が友Mに溝口をすすめるんだったら、この作品だなあと… 

元々おさんは木暮実千代の役だったというのをどっかで読んだ記憶がありますが、香川京子の若い、等身大のおさん、すばらしかったですねえ。長谷川一夫の一々色っぽいのにはやや辟易した。大スターじゃない茂兵衛も見てみたかった気がした。

見終わって、清清しさと、joyといってもいいような感激がのこりました。悲劇なのに。近松なのに。