あさってからの渡米が気にかかる。

トランクをひっぱりだしたものの、まだ荷は詰めていない。
口をついてでる言葉といえば、「●●●●●」。むしろ逃げ出したいくらいだとも思う。
子どものとき住んでいた国だというのが厄介だ。なまじっか記憶が残っているだけに始末が悪い。
加えて今の自分を持て余し気味である。前に「帰った」のは高校生のときだった。今度こそ確実に大人として遇されるだろう、が、自分は何者かに成ったのか?
まず成田からニューアークへ飛び、NYに3日滞在する。そののち向かうことになる都市は現実の町であって現実の町でない。旅行は儀式ととらえられる。空港は現代の神殿だ。
自分は、目前まで迫った儀式のことを考えないように、トランクから眼を、逸らしている。