小幸を得る(ちがう)

友人来訪。連弾なんかして、19世紀市民階級の抬頭〜(わけわからん)みたいな遊び方をする。夜10時をまわるとやつが例のごとく、「歌でも歌おっかなー」といいだす。

はじめはモーツァルトやらシューマンやらを友が歌って、私が伴奏して、健全にすごしていたんだが、「よーし次はこれだ!」と私がとりだしたのが、ヴェルディのElla giammai m'amo ... Dormiro sol(彼女はわたしを愛してはいない〜ひとり寂しく眠ろう)。ご存じ、専制君主の心の孤独を歌ったバスの名アリアだ。
ヘ音記号だー」といいつつ、初めて見た曲を一応それっぽく歌う友。「かっこいい曲だね! もう一回」といって2度目を歌う。

帰国以来、ドン・カルロ病に罹って、時々夜中にひとり陰気に弾いてた曲である。副科のへろへろソプラノとはいえ、こうして一緒に歌ってくれる人が現われたんでもう有頂天な私。

調子にのって立てつづけに、エボリの<ヴェールの歌>とO don fatale、ロドリーゴの死、エリザベッタのTu che le vanitaと歌わせたのみならず、フィリッポと異端審問官のW爺シーンまで一人二役でやってもらったのだった…。
はっと我にかえって、自分の変態っぷりに思わず退いたものですが…
でも相手も「こんないい曲ばっかのなんてオペラなんて知らなかったよ。タイトル何? 今度ビデオ見てみよー」といってたし、まあいいか。