COSI再見

ジャンス拝みに新国へ。
今日はマチネー公演。なんかマチネーのCOSI、よかった…。観るぞーという気力が湧いて。初台までチャリ漕いでくあいだも、1幕冒頭の男声トリオが脳内で再生かかっていて、すっかり「出来上がって」劇場入り。

ジャンスは今日も眼福・耳福であった(うっとり…)。

今までフィオルディリージっていうと、キリ・テ・カナワとかグルベローヴァとか、あー大歌手が歌ってるのねーって感じで大した共感が湧かなかったのだけど、今回は満腔の同情をもって観てしまいましたよ。ジャンスの同役は、(月並みないい方をすれば)等身大のフィオルディリージ、そしてそれに「最高に美しい」と付く。役の格と歌手の格が丁度つりあうと、こんな素晴らしいことが舞台上で起こるということを示す好見本。あの2幕のロンドPer pieta, ben mio, perdonaラストの「mf」のすごさは後々まで忘れられそうにない。(スコアでの強弱指定は? いま手もとにないや…)

今日はドラベッラ役のエッレラも声がいい感じに絞れていて、持ち前の愛敬が活きてなかなか。さらに席の角度が、中嶋デスピーナの不敵な表情をながめるのに最適。
ヴァイクルはなーうーん、やっぱりSoace sia il ventoのことを根にもってしまう。自分の贔屓のドン・アルフォンソ役者は、みんなあの低声部が絶妙なので。この役本来の皮肉っぽさもこんなもんじゃないと思うし。せめて本音と建て前くらいは演じ分けてほしかったよなぁ。

それにしても、ジャンスとエッレラはカーテンコールで退場するときもうきうきと肩を寄せあって仲のよい姉妹みたいだったし、男衆なんかありゃどう見たってフェルランドとグリエルモ以外の何者でもないわな(とくにグリエルモの造型は実にいい線いってた。さもありなん、なグリエルモ。…時にこないだ、このグリエルモ役のローゼンをバスバリと呼びましたがあれはやっぱバリトンだな、うん…)。世代のばらつきもなく、いい感じにそろえたもんだと感心。

しかし男性諸君、女(に限らず)を誘惑するのにppは必須ですぞ。

演出は、すっきりしていて悪くないのだが、いっそのこともっとすっきりしてしまえという気も…。
2幕冒頭に出てくるリュベンスの絵…あれ見て、咄嗟に男性の視線が照射された女性像? などと深読みしちまうんだが、単に快楽的・官能的なムードを出そうとしただけみたい…。
詞の内容を相対化させるために、唐突に登場する男女の群れもちょっと…。合唱の処理に困ったんだろうけど…。新国オペラって昔からエキストラをわらわら出すのが好きなのはなんなんだろう。

明後日が千秋楽か。むむむ。

ところで10月のキーンリサイド'sドン・ジョヴァンニ…土曜が発売日だったなあ(死亡)