サトクリフの非児童文学

神父に並行して英雄にも手をつける。ローズマリー・サトクリフの『英雄アルキビアデスの物語』。
サトクリフの一般向け歴史小説も邦訳刊行がすすんでいるとは知らなかった(汗)。ロビン・フッド伝説には食指が動くなあ。

2週間ばかし前に読みはじめた『アルキビアデス』だが、興がのらずに1章読んだだけで寝かせておいたのだった。古代ギリシアにたいして興味がないうえに、歴史ロマンという気分でもなく…。ぼーっとして読んでいると、オッフェンバック(la belle Helene)が頭で鳴り出しちゃったりする…この上なくミスマッチじゃ。原題がThe Flowers of Adonis、文字どおりアドニス哀悼のシーンからはじまるもので、オペラッタ冒頭とかぶってしまうのね。

それでも最初の2章をクリアすると、サトクリフ節に乗って調子よくいける感じ。1969年の作だ。
一人称小説だが、語り手をひとりに固定せず、時に「死者」まで動員して自由にさまざまに語らせる。「英雄」像を描き出すうまいやり方。それでもアルキビアデスに付き随う「船乗り」ことアンティオコスが筆頭格になりそうだが(今7章)。こういう男ふたりはいかにもサトクリフ。

猪熊氏の男前な訳文でないのがちっとさびしい。