キレたスポール
家にあったダニー・ボイルのVacuuming (2001)を見た。
掃除機のセールスマン見習いの青年が、鬼のような成果主義の先輩と外回りに行く話。
一緒に見たSは「後に何も残らん映画」と酷評していたけど、そんなこともない。<28日後…>よりは大分いい。短くまとまっているのもいい。ただ<トレイン・スポッティング>が好きーという人は多そうだけど、この作品にそういったファンシーさはないです。
個人的に、<セールスマンの死>とか、IKKIで連載している「フリージア」あたりをぼんやりと連想して見ていた。
先輩役はティモシィ・スポールで、マイク・リー作品とはうってかわった恐ろしくテンションの高い演技を披露してる。「フリージア」でいうと溝口の位置(…最悪)。とにかく下品で不快な人物なんだけど、妙な魅力がないでもない。あのヌートリア系のルックスからして受けつけないという人いるだろうという気はするが…
一味違うスポールが見たいって人は見るべし。
GKC3
一月前(id:moma_anki:20050420)にチェスタトン断ちを宣言したにもかかわらず、抜けられずに今に至る。
ちょうどBBC R4で『奇商クラブ』ラジオドラマ(全6回)なんかがやってたせいもあるのだけどー…
つまりは自分が意志薄弱なのです。だって、GKCの文章、気味がよすぎる。
書店に行っても、ふだんは寄りつかないミステリの棚で物欲しげに、「ブラウン神父解体新書」「ブラウン神父の英国」状のものをさがしてしまう。無いってば。
と思ったら……これは私が思いえがいているものですか?
『ブラウン神父』ブック
現物で確かめようと古本をネットで注文。
ボルヘス&ビオイ=カサーレスの『ドン・イシドロ・パロディ六つの難事件』
これは、パスティーシュではないのか? …ちがうみたい。でも「ブラウン神父」なる人物も出てくるようだ。読んでみよう。
ボルヘスといえば、先日「バベルの図書館」叢書(国書刊行会)のチェスタトンの巻を古本で購入。きれいな本が手に入ってうれしい。何より訳が富士川氏なのがうれしい。中村氏訳はあまり好きでないので。創元社でも吉田氏訳はなんかよい のですが。
『ポンド氏の逆説』より「三人の黙示録の騎士」、『ブラウン神父の童心』より「奇妙な足音」「イズレイル・ガウ」「アポロンの眼」、『知恵』より「イルシュ博士の決闘」を所収。
一月前に注文した『木曜の男』の注釈本は未入荷。焦らさないでくれー!!
2,3日前に行った西洋美術館のショップで立ち読みした本。『世紀末の赤毛連盟』。GKCファンとしては、彼の作品に言及しないのは片手おちでないか?と思ったりするものの読んでみよう。
バーニーといえば
昨日の記事にバーニーが出てきたので、ちょっと思い出したことメモ。
3月にメトロポリタン美術館に行ったとき、そこの楽器展示室で、ゲインズバラによるバーニー肖像が掛かってたのを見まして。これこれ。
一般にバーニーといえば、NPG所蔵のレノルズの絵*1が有名だから、(ライヴァルってことになってる)ゲインズバラにも描いてもらったんだ へー、と。
それにしても、やっぱり全然雰囲気ちがうな。画家の性格のちがいが出てるね。そういややっぱりレノルズとバーニーってDr.ジョンソンのサークル仲間だったわけ?(知らなかった絵。ちっさくて見えないが。)それにしてもこのゲインズバラの絵はまるで別人だね…
──などとぼんやり考えてたら、別人だった!
ちゃんとMET美のページに、「バーニーの甥」って出ていた。いやー早とちりしかかった。
甥は、Charles Rousseau Burney (1747-1819)、有名なチェンバロ奏者。いとこのHetty Burnetと結婚…うんぬん。
レノルズといえば、今年大展覧会があるんだよね。って昨日から始まってるわ。やー観にいきたいなあ…
*1:昨日のリンク先。個人的にすごく好きなレノルズ絵。有名な若い自画像もかなり好きだが。
遺伝子の呪いか?
今日は同い年の親戚に会いました。
やつはcountertenorなので、私と同じ音域で歌いやがります。私より高いかも。
地声は低くて太いのに、ふだんは「ひょろひょろ〜〜」と裏声をつかうあたり、うちの犬(♂)そっくり。低声好きとしては許せませんが、どうも高い声で歌いたいって本能があるらしいよ。
ここのところ共通の友人もふえて、よく会うんだけど、一年前まではその存在すら知らなかった遠戚である。(幼いときに一度会ったとか会わないとか…)
しかし遺伝子ってのは怖ろしい。何かしら、共通項が多いのだ。それもマニアックな……
こないだヤツのいないときみんなと食べに行った店で、私がでっかい帆船模型を見つけて「わー」とかいってると、
「その船、○○ちゃん(はとこ)も反応してたよ」。
今日もうちの犬の写真を見て、「魔犬だ魔犬」というので、一応確かめたらシャーロッキアンだった…。
ふたりでジェレミー・ブレットがどうとかいって、グラナダ版のテーマとか口ずさんでしまう。
でもって二人ともヘンデリアン…
(まあカウンター的にヘンデルってのは正道だけども、ヤツや私の場合、音楽史的にも好きなんだよね…)
私の(見せびらかそうと持ってきた)Handel House Museumのブックレットをぺらぺらめくって、
「チャールズ・バーニーだー♪♪」
と喜ぶ姿は、なかなかぞっとしないものがありました。あんたは私か。
私は、帆船もワトスンもヘンデルもバーニーも、自由意志で好いて、今まで生きてきたつもりだったけど、この男を眼にすると、20余年間 一体己は何に操られてきたんだ!? と思っちまいますね。深淵をのぞき込んだような気分になる。
まっ、似ない部分はまるで似ないので救われますがね。